最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)1119号 判決 1971年4月22日
上告人
日本相互住宅株式会社
代理人
菅原二郎
被上告人
菅野富恒
代理人
堀切真一郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人菅原二郎の上告理由第一について。
原審は所論の甲第一号証によつて本件請負代金内金合計一六四万円が原被告間に授受されたことを直接認定したものではなく、これら甲号証の存在を証拠資料として他の証拠と共に、右甲号証が被上告人と訴外山田文雄または同斉藤重吉との間に授受された文書であることを認定したものにすぎないことは、原判文上明らかである。したがつて、原審は、右甲号証が作成者の意思を表現するものとしてその記載内容にそう事実を認定したのではないのであるから、原判決が右甲号証の成立を認める証拠を示さなかつた点に違法の廉は存しない。また、甲第八号証の一ないし四について、証拠調の申立をした被上告人が作成者を訴外山田文雄として主張したことは記録上明らかであり、原判決が所論右山田の証言により同訴外人が右甲号証を作成したことを認めた点についても何らの違法を認めることはできない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原判決を正解しないか、または独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。
同第二について。
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右認定判断の過程に所論の違法は存しない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するか、独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(藤林益三 岩田誠 大隅健一郎 下田武三)